先日リリースされた『Adobe Creative Cloud Express』と『Canva』、一見するとターゲットや機能は同じように見えますね。競合する(のか?)2つのサービスをざっくり(あくまで私の視点で!)比較してみました。
AdobeもCanvaもお世話になってます
ちなみに私は今も昔もAdobeユーザーです。DTP→Web制作の現場を経て長年Adobeに大変お世話になっている身であり、自分にとってAdobe製品は大変馴染み深いものになっています。
一方Canvaは仕事で使い始めたのはここ1年というところでしょうか。主に企画書やマニュアル等の作成を通じて「Canvaすごい!超便利だな!?」と驚嘆したのが始まりであり、その後「仕事レベルでも簡単なバナーやサムネ画像はフォトショ・イラレ無しでCanvaで完結するのでは…」→「いけるな」と思うに至ったのでした。
そして作業環境は99%デスクトップです。モバイルで作業することはほぼ無い状況なので、外出先で編集してスピーディーにアップロード、といった環境を必要としていないため、モバイル作業の快適性とかその辺にメリットを感じない傾向にあります。
前置きが長くなりましたが取り急ぎ2つのサービスを使ってざっくり比較した結果、個人的に気になったポイントを書いてみたいと思います。
※どちらのサービスも有料プランを使用しています。
実際に使ってみた感想
一見よく似た印象の両者ですが、共通する部分は主に以下の点。
・操作は易しく機能は限定的。主にノンデザイナー向け
・様々なテーマに応じた豊富なテンプレートが用意されている
・写真やイラストなど豊富なフリー素材が使える
・デスクトップ、モバイルの両方で使える
・無料版でもストレージが使える
など
現時点での私の結論です。
あくまで限定的な用途の例ですが、バナーやサムネイルなどの画像作成ならCanvaの方が使いやすいと感じました。
提供されているフリー素材、テンプレートの使いやすさも、現時点ではCanvaの方に分があるなと言う印象です。
尚、『Adobe Creative Cloud Express(以下Adobe Express)』と『Canva』両者の正確なスペックやプランの内容は各公式ページでご確認ください。
Canva
プラン詳細
料金(有料プラン)
- Adobe Express:月額1,078円
- Canva::月額1,500円
まず両者とも無料プランで継続的に使うことができます。
有料プランの価格は一見Canvaの方が高いように見えるのですが、1,500円で5人まで利用できるので、実質月額300円/1名と思えば割安感がありますね。小規模企業や店舗なら5人使えて1500円(年額12,000円)はかなりお得だと思います。
テンプレートの質と量
まず両者とも量は豊富です。
質について、これは両者に共通して感じることなのですが、元々外国産(Adobeはアメリカ、Canvaはオーストラリア)なのでテンプレートも完全にローカライズされていないものも結構あるかなと言う印象を受けました※。
ただ、今後は両者とも国内向けに作られたものがどんどん増えていくのではないでしょうか。
現時点で比較すると、Canvaの方がバラエティー豊富で使いやすいものが多いと感じました。
※英語で作られたデザインはその文字(フォント)を含めてデザインが成立しているため、単純に日本語に置き換えるとイメージが崩れる場合がありますよね。実際どのように作成されているのか知らないのであくまで推測なのですが…
フリー素材-1. 質と量
- Adobe Express(有料プラン):1億6000万超
- Canva:(有料プラン):1億超
両者とも使いきれないボリュームですが、実際に素材を検索してみるとCanvaの方が使いやすいと感じました。
もちろん、どんなテーマで検索するかによっても違いはあると思います。
今回は「リボン(または ribbon)」で検索してみたのですが、結果には結構差がある印象を受けました。
まずAdobe Expressの『デザインアセット』で検索した結果が下図の左側です。
最下段の『元素』(元はelementとかだったんでしょうか…?)のカテゴリの中には現在90点あります。どちらかというとシンプルなデザインが多いようですね。
対して右側はCanvaの検索結果です。写真や動画もありますが、『グラフィック』のカテゴリだけでもスクロールが終わらないほどの量が表示されます。デザインも様々、バラエティーに富んでいます。
さらにその中の『似ているアイテムを表示』機能で深掘りすることもできるので、非常に充実している印象です。
さらにAdobe Expressでは『写真』のカテゴリでも検索してみました。先の『デザインアセット』カテゴリよりも数多くの素材が表示されるのですが、背景が統合された画像なんですよね…。要素を重ねる場合などは背景透過の素材が必要、ということで、引き続きAdobe Expressの背景削除機能を使って画像を切り抜いてみた結果が下図になります。
うーんこれは結構辛い…。画像が欠けてしまったり、背景の白い部分が少し残っています。1クリックで綺麗に削除し切れない場合、一応ブラシを使って調整はできるのですが(Canvaも同じ)、流石にPhotoshopのような細部の調整は無理。1クリックで除去し切れない場合は調整は厳しいと思います。やはり「細密な調整が必要ならPhotoshopを使う」の一択ですね。
さらに、この背景削除機能について両者を比較してみました。
背景削除機能
- Adobe Express:無料プランから使用できる
- Canva:有料プランから使用できる
簡単に写真の背景除去ができると言う機能は大きな魅力ですよね。プロユースのツールを使わず、誰でも簡単に素早く処理できるのは非常にありがたい。
ですが両者のプランを比較すると、この非常にニーズが高いと思われる背景削除機能は、Adobe Expressは無料プランから、Canvaは有料プランからという差が!
これは痛い…と思ったのですが、使ってみるとその精度に結構差が生じることがわかりました。
以下の3点の写真を使って削除機能を比較しています。A,BはAdobe Express提供のフリー素材、CはCanva提供のフリー素材です。
削除結果はそれぞれ左がAdobe Express、右がCanvaで、わかりやすいように背景を黒にしています。
▼ それぞれ背景削除した際の操作を動画で確認できます。
同じ画像を使って比較するとかなり差を感じますね。Adobe Senseiどうした…というかむしろCanvaの背景リムーバがすごいと言うべきでしょうか。これは結構差が付いたなと。
背景リムーバは有料プランからですが、これは有料の価値有りだと思います。
フリー素材-2.動画のフリー素材
- Adobe Express:無し
- Canva:無料プランから使用できる
そもそもAdobe Expressはフリー素材ではなく、自分で撮影した動画を編集・加工するためのツールという感じですね。
背景透過(png)画像の書き出し
- Adobe Express:無料プランから使用できる
- Canva:有料プランから使用できる
例えばWebサイトや動画に画像を挿入する際に、背景透過の状態で書き出さなければならない場合があるのですが、結果は上記の通り。Canvaのメインユーザーにはあまりニーズは無いのかな…?
文字の縁取り(アウトライン)
- Adobe Express:無料プランから使用できる
- Canva:できない※
文字に縁を付けたデザインはよく使われると思うのですが、なぜかCanvaではこれができないのです。
※「中抜き」はできますが、その場合塗りがなくなってしまう…
文字を重ねるなどの処理で無理やり作ることもできますが、これはシンプルに機能を追加していただきたいところ…Canvaさんお願いします!
アートボード(複数ページ)の作成
- Adobe Express:できない
- Canva:無料プランから使用できる
PhotoshopやIllustratorではアートボードと呼ばれますが、Canvaでは同一デザイン内でページの追加、複製ができます。例えばバナーなら色違いで複数パターン作成したい時や、複数ページに渡るプレゼン資料など、作成データの管理のしやすさと言う点から欠かせない機能です。
ですがAdobe Expressの方ではこれができない模様。少なくとも現時点で自分が操作した段階ではこの機能は見つけられませんでした。複製すると別プロジェクトになってしまうので、もし無いのであれば、この辺りは早急に追加していただきたいところです。
終わりに
かなり限定的ですが、取りあえず気づいた点についてご紹介しました。
両者の機能は共通している点はあるものの、やはり用途や目的によって選ぶのが良いと思います。
Adobe Expressは元々Creative Cloudのユーザーなら追加料金無しで有料プランが使えますし、デザイン初心者でもこの先クリエイティブを追求したい方は他のAdobe製品への入り口になるかもしれませんね。
さらに外出先でモバイルを駆使して写真や動画の詳細な編集を行うことが多い人は活用の機会がありそうです。(Adobe Premiere RushとPhotoshop Expressのプレミア機能が使えるようです)
一方Canvaは単純なグラフィックの作成に留まらず、企業や学校単位で幅広い用途に活用できる、非常に間口の広いサービスだと思います。
Canvaを使えば資料作成など、デザイン面が軽視されがちな分野のビジュアル面もどんどん強化できるはず!
と言うことで長年Adobeユーザーであり、Canvaファンでもある私は引き続き『Canvaでこんなことできるんだ!』と言う発見を増やしていきたいと思います!