色の使い方は自由です。まさに十人十色、デザイナーの個性を表現できるのが色選びの楽しいところですが、単なるイメージではなく、情報を正確に・分かりやすく伝えるのが目的だとしたら、そこには抑えておきたいルールがあります。
色覚異常の方の色の見え方に配慮する
日本では、何らかの色覚異常の特性を持つ男性の割合は約5%(20人に1人)に上ります。(女性は約0.2%)
仮にこうした方への配慮が欠けた配色が原因で重要な情報やアピールしたい情報が見逃されていたら…
ビジネスにおいては約5%のターゲットを逃すことに繋がり、機会損失の可能性も出てきますよね。
標識や看板、取扱説明などの注意喚起であれば、場合によっては命の危険につながることも。
視認性や可読性を意識したユニバーサルデザインにおいては、こうした色覚異常を有する人に配慮した色彩設計を心がけることも重要な課題の1つになってきます。
色覚異常のタイプ
色覚異常の特性はそのタイプによって以下のように細分化されており、その内、1型と2型の人が大半を占めています。
*カラーユニバーサルデザイン機構(略称:CUDO)
- 1型 ⁄ P型:視細胞・L錐体(主に赤を感じる)が無い、または機能しない
- 2型 ⁄ D型:視細胞・M錐体(主に緑を感じる)が無い、または機能しない
- 3型 ⁄ T型:視細胞・S錐体(主に青を感じる)が無い、または機能しない
区別しづらい色の組み合わせの例
区別しづらい色の組み合わせのとして、『赤と緑』『青と紫』『赤と黒』などが挙げられます。
以下の例では1型と2型の人の見え方を擬似変換によって再現しています。
3色覚(正常色覚)の見え方
1型常色覚の見え方(擬似変換)
2型常色覚の見え方(擬似変換)
このように色による区別がつきづらい場合でも、「形」や「あしらい」の工夫で視認性や可読性を向上させることは可能です。
そこで、やりがちな『ダメな例』と、その改善方法を紹介します。
色だけでなく、文字情報を加える
1型と2型の特性は異なりますが、赤と緑の区別がつきづらいという点では共通しています。日本における色覚異常の割合5%の内、1型と2型が占める割合が非常に高いため、色だけで区別させたい場合には、赤と緑の組み合わせはNGと覚えておくと良いでしょう。
改善案としては、色だけでなく文字情報を追加すると識別性が向上します。
3色覚(正常色覚)の見え方
2型常色覚の見え方(擬似変換)
文章の強調箇所は赤色だけでなく、
下線や太字の装飾を加える
1型は赤系の色が暗く見えてしまい、黒との区別がつきづらいという特性があります。
そのため、左側のように文章中の注目させたい箇所を赤字にするやり方は、1型の人には伝わりづらくなってしまいます。
そこで、色変えだけに頼らず、太字にする、下線を引くなどの方法で強調すると1型の人にも分かりやすくなります。右側の例では黄色のアンダーラインを使って強調しています。
3色覚(正常色覚)の見え方
1型常色覚の見え方(擬似変換)
Canvaユーザーにおすすめのチェック方法
画像を白黒(グレースケール)にすることで、色のコントラストが十分か簡易的にチェックすることができます。
以下の手順で、視認性や可読性が保持されているかを、目視で大まかに確認することができますよ。
- 作成したデザインをpngやjpgなどの画像データとしてダウンロード
- 1.をCanvaにアップロードして『画像を編集』を選択
- 『調整』の中の項目:彩度の値を『-100』に変更
その他のチェック方法
色覚異常の特性を持った方の見え方(擬似変換)は、AdobeのPhotoshopやIllustratorを利用すると簡単に確認することができます。
また、Adobe Colorのカラーホイールには色覚異常対応をチェックする機能が追加されました。
Photoshopの『校正設定』から擬似的に色覚異常の見え方を再現
Adobe Colorでもチェックできます
色覚の多様性・その呼称について
色覚特性について書くときに、その呼称について悩むことがあります。
色の見え方は年齢によっても少しずつ変わってきますし、そもそもあなたの見ている色と私が見えている色は本当に同じ?という疑問は常々感じています。
眼の機能には個人差がありますし、同じ色でも快・不快などの感じ方も違うはず。
もちろん色は機械で計測できるので、正確な数値として共有できますが、『色覚異常者』という言い方がちょっとキツイなと感じることがあるのです。尚、現在3通りある呼称は以下の通りです。
⚫︎色覚異常者
「色覚異常」は医学・学術用語です。正式な論文などではこれを使用します。
⚫︎色弱者
「カラーユニバーサルデザイン機構」(略称:CUDO)が提唱しています。
⚫︎色覚多様性
日本遺伝学会で提唱されています。
デリケートな部分でもあり、相手によっては不快に感じられる可能性もあるので、こうした表現は状況に応じて使い分けるという配慮も必要かもしれませんね。